マフラーには、ステンレス、スチール、チタン、カーボンなどの素材が使われています。

ステンレスは錆びない印象があるかもしれませんが、錆びにくいのであって錆びないわけではありません。ステンレスだから何もしなくても大丈夫と放置しておくと、いつのまにか錆びだらけになり、付着物がついて、錆び取りに苦戦することになります。

冬に雪が多い地方では、融雪剤が道路に巻かれますから、それによっても錆びが出やすくなります。

そんなことにならないように、きれいなうちに防錆対策をしておくことをお勧めします。

ここでは、ステンレスの知識を高め、ステンレスマフラーへのコーティングについて説明していきます。

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1. ステンレスとはどんな金属?

現在では、JIS規格のステンレスは100種類以上あるそうです。また独自に開発されたものもあります。それらが必要に応じてそれぞれの用途に適用されています。

ステンレスは表面が酸化膜で覆われていて、それが保護となり、錆びにくくなります。

ステンレスの主成分は鉄が約半分を占め、ニッケル、クロムなども含む錆びにくい合金です。鉄が50%以下になると、ステンレス鋼ではなく、合金と呼ばれます。

鉄にクロームを添加すると錆びにくくなります。その分量が増すほど錆びにくいですが、10%ぐらいであれば、そんなに効果はありません。

1-1. ステンレスにはどんな種類があるのか?

ステンレスは、大まかに分けると、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系(二相系)、フェライト系、マルテンサイト系、となります。

マフラーには、クロム系のフェライト系ステンレスが多く用いられます。フェライト系ステンレスは、溶接や加工がしやすく、耐食性に優れていますので、自動車の部品や、厨房用品などに使用されます。薄板にして使用されます。

クローム・ニッケル系のオーステナイト系ステンレスも加工性、溶接性耐食性も優れていて、広範囲にわたって使われています。自動車部品にも用いられています。このステンレスの製造量は全ステンレス生産量の半分以上を占めています。

1-2. ステンレスは錆びる?

はい、錆びます。

ステンレスもチタンも、金属は化学反応によって酸化します。金属の種類によって、腐食する環境や速さが違ってきます。

ステンレスは、英語では、stainless steel と言います。日本での正式な名前は「ステンレス鋼」と言います。stainは「しみ、汚れ、傷」などを言い、lessは「より少ない」。つまり「錆びにくい」ということを表しています。

一般的に、ステンレスは錆びにくく、熱に強いと言われています。実際は錆びるのですが、その速度は鉄などと比べるとはるかに遅いです。しかしステンレスの種類や加工方法によっては、熱に弱く錆びやすいものもあります。また、ステンレスを覆っている酸化膜は塩化物に弱いという性質があります。

冬になると、凍結防止の為に、道路に大量の塩化カルシウムが撒かれます。そこを走ることで、マフラーには融雪剤やそれを含んだ雪がかかりますから、雪国や海辺を走る車は特に注意が必要です。

1-3. ステンレスはコーティングされている?

ステンレスが錆びないのは既にコーティングされているからで、その上コーティングは必要ないのではないか?という疑問を持つ人がいます。

ステンレスと鉄との違いはなんでしょうか?ステンレスは錆びにくいですが、鉄はすぐ錆びます。

ステンレスはクロムやニッケルなどを混ぜた合金の鋼です。鉄の中にクロムが混ざることで、クロムと酸素が結合します。そして、ステンレスの表面に薄い酸化皮膜を作ります。それを不動態皮膜と言いますが、その皮膜がコーティングとなり、耐食性が強くなります。非常に薄い皮膜なので、皮膜があることすらわかりません。この皮膜は酸素や水があれば、クロムと酸素が結合して皮膜を新しく再生します。そのおかげで錆びにくくなっています。

1-4. ステンレスで気をつけるべき「もらい錆」とは?

ステンレスの表面に他の金属が付着したまま放置され、湿気や結露などが含まれると、その金属が陽イオン化して腐食を起こします。そして金属が水分に溶けて錆びが発生します。電触と言われるものです。

これはステンレスが錆びたわけではなく、「もらい錆」と言って、鉄の錆びが付着している状態です。つまりは、ステンレスが錆びた鉄に接触していると、その錆びをもらってその接触部分からステンレスも錆び始めるという現象です。

ステンレスにも鉄が含まれていますから、この錆びがステンレスに影響を与えないよう、異種金属とステンレスの接触は避けるようにしたいものです。錆びがついてしまったら、早め錆び落としをしましょう。

ステンレスをいつまでもきれいなままで保ちたいのであれば、やはり適度なメインテナンスが必要となります。

1-5. ステンレスマフラーに錆び対策は必要か?

既に述べましたように、ステンレスでも錆びてきますので錆対策は必要となります。溶接加工を施した部分は酸化して錆びが発生しやすくなります。

マフラーは雨の日などに走ると雨水が飛び散って頻繁に濡れる部分です。何もせず放っておくと少しずつ錆びていきますので、早めに錆び対策は行っておくべきです。

冬場には融雪剤がたくさん散布されますから、それが付着すると錆の原因になります。

最近はもっと防錆効果があるものを求められていますので、メーカーなどもステンレス製のマフラーを使うようになってきています。純正品のステンレスであれば、そう簡単にサビは発生しませんが、お手入れを適度にすることで良い状態が長持ちします。

2. マフラーのステンレスにはどんな種類がある?

マフラーに使われるステンレスの多くは、オーステナイト系か、フェライト系と呼ばれているものがほとんどです。

オーステナイト系は、鍋などの調理器具に使われているステンレスと同じものになります。鍋やマフラーの素材は熱に耐え、酸化しないものが適しています。フェライト系のステンレスはメーカー純正のマフラーによく使われていますが、熱にはあまり強くなく、錆びやすいです。

ステンレス製品についている「SUS○○○」という番号を見れば、どちらのステンレスを使っているか見分けることができます。オーステナイト系のステンレスは300番台、フェライト系とマルテンサイト系が400番台となっています。

また、ステンレスには磁石につくものとつかないものがありますから、磁石で調べることもできます。

400番台のステンレスは磁石にくっつき、300番台のオーステナイト系ステンレスは磁石にくっつきません。

400番台のステンレスには、鉄にクロムを10.5%以上が混ざっており、300番台のステンレスには、鉄にクロム18%とニッケル8%が混合されているためです。

つまり磁石がピタッとくっつくマフラーは、400番台のフェライト系とマルテンサイト系で、錆びやすいということになります。

しかしオーステナイト系のステンレスであれば錆びないのか?というとそうでもなく、激しく曲げたり、加工の仕方によっては、その部分の金属組織や性質が変わり、錆びやすくなってしまいます。

もしステンレスマフラーにするのであれば、マフラーの材質がSUS304や SUS316などのオーステナイト系のステンレスにしましょう。オーステナイト系は磁石がつきませんので、試してみられるといいでしょう。

その他のステンレスにすると耐食性がオーステナイト系より劣りますので、錆びる確率は高まります。

今お使いのマフラーが錆びやすいステンレスであるならば、磨いてもまた錆びが生じます。こまめに磨くか、コーティングをして錆びが生じにくくするかするといいでしょう。

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3. ステンレスマフラーのメインテナンス方法

ステンレスとチタンとではメインテナンスのやり方が違います。ここではステンレスマフラーのメインテナンスについてお伝えします。

錆びにくいステンレスとはいえ、定期的なメインテナンスは必要となります。ステンレスはだんだんと表面がくすんできます。マフラーが黒ずんでいる場合は、排気熱を受けて、マフラーの表面が酸化してしまっているのが原因です。高温の熱がかかると、ステンレスの表面に酸化によって腐食します。

3-1. ステンレスの腐食の原因は?

ステンレスは耐食性に優れた金属ですが、使用条件や環境によっては錆びが出やすくなります。

主に以下の5つの原因があります。

  1. もらい錆:ステンレスでない異種金属の錆びがステンレスに付着することで起こります。
  2. 塩分:海岸地域の潮風や融雪剤の塩化カルシウムによって生じます。
  3. 付着物:自動車の排気ガスや、土砂、ほこりなど飛来してくる付着物が表面につき、表層を覆っている不動態皮膜が不安定化したり、付着物が塩化物を呼び、錆を起こします。
  4. 硫酸、塩酸などの有害成分:温泉地の大気や工場排水やガスに含まれています。
  5. 鉄道沿線、製鉄所、鉄工所の鉄粉:鉄粉などの異種金属の付着。

3-2. ステンレス製マフラーの腐食を防ぐには?

錆びを防止するには、耐熱塗料を塗装するのが一般的です。

マフラーは高温で、腐蝕性の排気ガスに随時接触しているので、それに耐えうる材質が用いられていますが、それでも高温で使用し続けると、常温の場合よりも劣化が早いです。

溶接された箇所が一番影響を受けやすく、割れが生じやすく、もらい錆が発生しやすくなります。この部分に錆止め処理をしておきましょう。

また、見た目はステンレスのように見えても表面加工(メッキ)を施したものであれば、表面が傷つくとそこから錆が発生しやすくなります。

自分で塗装する場合は、市販の塗料がたくさんありますので、自分の用途にあったものを選んで使いましょう。手軽にできて安価ですが、耐候性、耐久性にやや欠けています。グリスやCRCなどは高温になるマフラーには向いていません。

また、電気を流すことで腐食しにくい防食電位に変化させる方法もあります。これは塗装ができない環境下や部位に対して施されます。

3-3. ステンレスマフラーのお手入れ方法

日常のメインテナンスは、中性洗剤等を布やスポンジに含ませて洗って、水で洗い流し、最後に乾いた布で拭きます。

もらい錆びがあれば、市販のスレンレス用清掃薬剤などを使って、スポンジやタワシ等を用いて取り除きます。きれいに水で洗い流して、乾いた布でふき、乾燥させます。

それでも取れない赤錆びは、錆が進行してステンレスも錆び始めている可能性があります。市販の赤錆び用のステンレス清掃薬剤を用いるか、硝酸の15%の希釈液を使います。

ステンレスタワシ等でこすり落として、十分な水洗いをします。この場合、表面に擦りキズがついてしまいますのでご注意ください。

マフラーは消耗品です。錆びて穴が開いたら交換するものと思われていますが、できれば、穴が開くことなく長持ちできるよう、メインテナンスをしたいものです。

4. ステンレスマフラーにおすすめのコーティングは?

ステンレスは錆びにくいとは言え、錆びない素材ではないことはわかっていただけたと思います。ステンレス自身に錆びが生じると除去しづらくなります。事前にコーティングをしておくことで、そうなるのを防ぐことができます。

コーティングの種類としては、耐熱性のワックス、耐熱塗料、耐熱ガラスコーティングなどが考えられます。

マフラーは高熱になりますので、耐熱600度以上のものを購入しましょう。マフラー用となっているものがいいでしょう。

4-1. マフラーのコーティング時に気をつけること

まず錆がある場合は、錆取りをしておきます。そしてマフラーを水できれいに洗い流します。表面に付着しているホコリや土泥や油脂をきれいに洗い流します。十分に吹き上げて乾燥させます。

その後、コーティングする素材をマフラー表面に薄く塗布します。たくさんつけすぎたり、一箇所にたまらないように気をつけて、全体に薄く塗ります。耐熱塗料の塗膜を厚くしすぎると、剥がれなどが起きやすくなります。

耐熱塗料は、常温の乾燥では塗膜が半硬化なので、焼き付けが必要となります。しっかり常温乾燥させたら、エンジンをかけてアイドリングで焼き付け乾燥をします。

ここに書いていることは目安です。耐熱塗料により差がありますので、説明書をよく読み、それに従って行ってください。

5. まとめ

ステンレスは錆びにくい素材なので、そう神経質になる必要はありませんが、やはりメインテナンスを怠ると腐食が早くなってしまいます。そうならないように前もって予防のためにコーティングをしておくのも一案です。

耐熱塗料などでコーティングすることは、錆をなくすものではなく、遅らせるものですので、塗布すれば錆びつかないわけではないことを覚えておきましょう。

耐熱塗料は手を抜いて適当にしてしまえば、塗装が剥がれたり失敗する原因になりかねません。自分でするのが難しい、不安だ、面倒くさいと思うのであれば、業者に頼むことを考えてもいいでしょう。

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