自動車には塗装色の上にクリヤー塗装が施されています。そしてクリヤー層の上からさらに保護する役割を持つのがコーティングです。しかしそのコーティングは様々な条件で劣化するのが一般的です。

コーティングの効果として色の劣化や傷などのボディを保護する役割が期待される一方で、せっかくのコーティングが剥がれて知らないうちに防御力がなくなった、ということを経験した人も少なくないでしょう。

長持ちすると思っていたコーティングが、なぜ剥がれてしまうのでしょうか?コーティングが剥がれる原因と対処法を詳しく解説していきます。

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はじめに 流通しているほとんどのコーティングは剥がれやすい

現在一般的に流通しているほとんどのコーティングは必ず剥がれてしまいます。市販されているコーティング剤はほぼ100%剥がれるといっても過言ではありません。また、ディーラーコーティングやガソリンスタンドコーティングなど、お店で施工するコーティングもほぼ100%剥がれてしまいます。

コーティング剤の成分を紐解いていけば剥がれてしまう原因が明らかになるので、まずはコーティング剤の成分の特徴から解説しましょう。

剥がれの原因はコーティング剤に含まれる「有機物質」

一般的に流通しているコーティング剤の中には、

  • 撥水効果を演出するための「フッ素」
  • ツヤ出しの「シリコン」
  • ボディの穴埋めになる「レジン」


などの有機物質が含まれています。

撥水、ツヤ出しなど、コーティングの特徴とも言える効果ですが、これらの効果を演出するために含まれる有機物質は残念ながらコーティング被膜の劣化の原因になります。

この有機物質の最大の弊害は、紫外線や排気ガスなどで分解されて劣化が進んでしまいます。そして劣化した箇所がきっかけとなりコーティング被膜が剥がれていきます。

もしも撥水効果、ツヤ、などを期待する場合には、施工するコーティング剤の成分をしっかり確認しておきましょう。

剥がれないコーティングの見つけ方は、有機物質が含まれないコーティング剤は「完全無機質」のガラスコーティングを選ぶしかありません。

ここまでを簡単にまとめると、

  • 有機物質を含むコーティング(ワックス、ポリマー、ガラス系コーティング)=剥がれる
  • 完全無機質のガラスコーティング=理論的には剥がれない


となります。

ここで注目すべきことは、世の中に流通しているガラスコーティングと表記されているほとんどの商品は、完全無機質ガラスコーティングではなく、ガラス系コーティングに分類されるということです。残念なことにガラスコーティングと表記してあるものでさえも、ガラス系に類するものが多く存在します。

  • 有機物質が含まれているコーティングは剥がれやすい
  • 一般に流通しているコーティング剤はほとんどが有機物質が含まれている“ガラス系コーティング”



これらの事実を踏まえてコーティング選びのご参考にしてください。

1. 車のコーティングが剥がれる原因

車のコーティングが剥がれる原因はいくつか考えられますが、ポリマーコーティングやガラス系コーティングなど劣化しやすいコーティング剤において、劣化、剥がれの原因となる外部要因は、

  1. 紫外線
  2. 排ガスなどに含まれる有害物質
  3. 走行中にできる小傷
  4. メンテナンス不足

の3つが挙げられます。これらの原因を理解して可能な限り対処できれば、悪影響を軽減することが可能です。

1-1. 「紫外線」が原因でコーティングが剥がれる

コーティングへ大きなダメージを与える要因として、紫外線による影響や、熱によるボディの高温化などが挙げられます。コーティングだけではなく、クリヤー層に対しても悪影響を及ぼしてしまいますので、夏場の高温に晒される環境では、より一層の配慮が必要です。

厳密に言えば、コーティングのガラス被膜部分ではなく、フッ素、シリコン、レジンなどが紫外線により壊れて劣化します。その劣化した部分が原因でコーティング被膜全体が剥がれていきます。

紫外線が人体に影響を及ぼすように、コーティング剤に含まれる有機物質にも影響があります。屋内駐車場の利用や、日影への駐車が理想的です。

黒色のボディ温度は白色と比べ、5℃以上高温になることが証明されています。耐熱性の弱いコーティング剤を選ぶ場合には、注意しておきましょう。

1-2. 排ガスなどに含まれる有害物質が原因で剥がれる

フッ素、シリコン、レジン、などの有機物質は、紫外線で劣化するだけでなく、排気ガスや工場の煙などに含まれる有害物質が原因で劣化します。排ガスや工場の煙が多いのは高速道路や工業地帯です。

首都圏で言えば、湾岸線の川崎あたりは高速道路に加えてかなりの工場の煙が舞っているので、ガラス系のコーティングには悪影響を及ぼします。

1-3. 走行中にできる小傷が原因でコーティングが剥がれる

走行中の飛び石などで塗装へダメージを及ぼすことがあります。耐久性がないコーティングは飛び石により簡単に剥がれてしまこともあります。

傷がついた箇所から水が侵入し、水は水蒸気になると体積が増加します。コーティングと塗装の隙間に侵入した水が、増加した体積により行き場を失い、やがてコーティングを割ってしまうことがあります。

一度割れてしまったコーティングは再生不可能ですので、傷部分を再塗装し、新たにコーティングを施工するほかありません。

塗装費用はバンパー1本3万円程度です。さらにコーティング費用が加算されます。小さな傷を見つけた場合には、すぐにタッチペン等で塗装を保護し、錆の進行を食い止めるのが応急処置となります。

1-4. メンテナンス不足が原因でコーティングが剥がれる

メンテナンスと一口に言っても様々なものがありますが、コーティングの劣化は「放置」をすることによって、最も大きなダメージを受けることになります。

なんといっても、もっとも放置してはいけないのが鳥糞です。鳥糞を放置してしまうとどのような状況よりも大きな劣化が見られます。

鳥糞は酸性のものとアルカリ性のもの両方あります。放置すればコーティングだけでなく塗装にまでもダメージを及ぼします。

鳥の性質上、綺麗な車に写りこんだ自分を敵と勘違いしてしまい、攻撃しようとすることで糞を落とす鳥もいます。攻撃だけではなく、自分の姿に驚いた際にも落とします。発見次第、すぐに水などで除去するように心がけましょう。

ガラスコーティングはメンテナンスフリーと勘違いされがち!?

ガラスコーティングを施工した場合に、メンテナンスキットがついてくることがよくあります。施工後にも定期的に補修をおこなうことでコーティング効果を持続させることが目的です。

紛らわしいコーティング剤の広告を例にすれば「2年耐久」「3年間メンテナンスフリー」など、あたかも何もしなくていいようなイメージを与える文言を見かけます。

これにより「コーティングをしたのに車が汚れた」などコーティング神話が一人歩きすることがあります。

たとえ、メンテナンスキットを使用した管理が不要であっても、さすがに「洗車をしなくてもいい」というわけではありません。どんなに最高峰のガラスコーティングを施工しても車は汚れ、洗車は必要になります。

例えば、街中の通常走行でもボディに油分が付着します。ガラスコーティング被膜に油分が乗っていれば、撥水・親水効果が弱くなり、ツヤ感も損なわれます。洗車をすることで油分は除去されます。

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2. 剥がれの原因にはならないが…コーティング施工車の注意点

コーティングが剥がれる原因やきっかけとして「紫外線」「走行中にできる小傷」「メンテナンス不足」 を代表的なものとしてあげました。

直接的にコーティングの剥がれの原因にはならないけど、普段何気なく行なっていることが車に影響を与えていることもしばしばあります。

コーティングが剥がれることだけに気を取られずに、いろんな要因で車にダメージを与えてしまうことを覚えていただければと思います。

2-1. 洗車機(安価なコーティングでは傷が出るかもしれない)

洗車機の使用で剥がれることはあり得ませんが、コーティングへ傷が付くことがあります。特に硬度の低いコーティング剤であればなおさらです。硬度とは、硬さを傷は削れた痕が筋状になり、色が白濁することで傷と認識するようになります。

傷が入った部分はコーティング膜が薄くなっているため、保持能力も弱まると言えるでしょう。硬度の低いコーティングや洗車機での洗車が推奨されないコーティング剤を利用する場合には、自動洗車ではなく大量の水を使用した手洗いでの洗車を行いましょう。
コーティング施工車の洗車方法については、「コーティング車は本当に水洗いで良い?洗車方法と注意点まとめ」こちらの記事で解説しているので参考にしてください。

2-2. カーシャンプー選び

コンパウンド入りでなければコーティングに影響はありません。また簡易洗車フキンにもコンパウンドが含まれる場合があります。使用前に内容成分を確認しておきましょう。使用したコーティング剤のガイドラインにそったカーシャンプーを選んでください。

2-3. 水垢の原因を作らないこと

雨上がりや洗車後などボディに水が残っている状態で、太陽光などによって水が蒸発することにより水垢がは発生します。雨上がりなどはすぐに水を拭き取り、水垢にならないよう水分を除去しましょう。

モール類へ入り込んだ水を除去することは困難ですので、一度車を走らせ、風による力で吹き飛ばしてしまう方法も有効的です。

2-4. 事故後のコーティング再施工

事故の程度にもよりますが、大きく損傷した場合には板金、再塗装、そしてコーティングの再施工となります。

使用している塗料によって様々ですが、一般的にはには一週間ほどで塗料は完全硬化します。コーティング必ず修理業者へ完全硬化時間の確認しましょう。

完全硬化する前にコーティングを施工されると、塗料へコーティング剤が密着しすぎてしまい、塗料に含まれる揮発物質と一緒に揮発してしまい、コーティングが剥がれてしまいます。

3. コーティングが剥がれたままだと車はどうなるのか?

コーティングが剥がれたままにしておくことの悪影響について解説している方もいますが、プロの視点から見ると間違って認識されていることも多々あります。代表的な間違いとそれに対する真偽について解説していきます。

3-1. ガラスコーティングの剥がれ跡は汚くなるのか?

剥がれている層がクリヤー層ならば一目瞭然ですが、コーティングの層は目視で確認できるほど厚くはありません。コーティングが剥がれているかどうかを目視で確認することは不可能です。施工直後の効果を感じられない場合には剥がれている可能性は高いと言えるでしょう。

3-2. しっかり剥がさないと次のコーティングができない

こちらも NO です。

コーティング施工は、塗装表面にとても細かな傷を付け施工することで、強固な皮膜を形成することが可能です。

傷を付ける際に、古いコーティングと塗装面の段差が、自然と馴染みますので剥がさずとも綺麗に仕上がります。

以前のコーティング剤とは全く別物のコーティングを施工する場合には、剥がした方が良い場合もあります。

様々なコーティング剤が発売されており、その用途も様々ですので、施工する業者などへ相談したうえで決定しましょう。

3-3. ライト部分だと光の明るさが弱まって危険

初めから塗装されているクリヤー層が剥がれてしまえば白濁しますが、コーティング層が剥がれてしまう程度では目視で確認することは不可能です。

クリヤー層が剥がれてしまった場合には、再度クリヤー塗装をするか、目の粗いコンパウンドで磨くことにより光量を取り戻すことが可能です。

ヘッドライト部分にかかる熱は、車の樹脂部品ではトップクラスの高温になりますので、剥がれる前に日頃から磨くよう心がけましょう。

4. 車のコーティングが剥がれた場合の対処方法

4-1. 自分で施工し直す(1回目も自分で施工した場合)

何度も施工した経験があるなら事情が異なりますが、未経験ならば絶対に止めておきましょう。

手探りで施工できるほどコーティングは容易ではないですし、熟練度が異なればコーティングの耐久性にも差が生まれます。ポリッシャーの熱によってコーティング剤が焼きついてしまうなど、除去不可能となる恐れもあります。

このようにコーティングの施工は熟練の技がないとできない作業ですが、DIY用に市販されているコーティング剤もたくさんあります。

市販されているということは素人でもコーティング施工ができるということですが、その代わり、素人でも施工できるように液剤の質を落として販売されています。コーティングの専門家から言えば、市販されているコーティング剤は「コーティングもどき」といっても過言ではありません。

市販のコーティング剤でDIYされる場合は、このような事情を把握した上で自分で施工するか、業者に依頼するか検討していただきたいと思います。

4-2. 専門業者に頼む

やはり、高額な費用が発生しても専門業者へ依頼するべきです。先ほどの様々な失敗に対しての知識も豊富ですし、仮に失敗を犯しても全て負担してもらえることなどが挙げられます。

店舗によっては施工を見学するのも自由にできるので、細かな施工方法も見ていると勉強になります。自らが施工し失敗してしまった場合には、最初から専門業者へ依頼するよりも支払う額は大きくなります。

保険の意味合いや、勉強になる点、質問に答えてくれる点などを考慮すると、やはり専門業者に依頼する方が得策と言えるでしょう。

4. コーティング施工後のメンテナンスも見据えよう!

コーティングの耐久性を維持していくためには様々な手入れを行わなければなりませんし、なにもしなければ耐久性は低下していくばかりです。

車のボディを人間の皮膚と同様に考え、常に綺麗にし、直射日光を避けましょう。

劣化した場合には、自らの知識で行うのではなく、必ず専門業者で施工し、コーティングを維持していく方法についての説明を受け、日頃から手入れを怠らないように勤めましょう。

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